columnコラム

心理検査前の初回面接はなぜ必要なのか?

2023/06/11

雪花の心理検査について

こんにちは、札幌カウンセリングオフィス雪花(札幌市琴似、北区、東区、西区、白石区と、その他の区)の菅原奈緒(臨床心理士・公認心理師)です。

このコラムでは、雪花での心理検査について詳しくお話したいと思います。

『心理検査をご希望される場合は、検査の前に初回面接を行います。そのため初回料金が心理検査の料金とは別にかかりますので、予めご了承ください。カウセンリグを継続中の方の場合は、新たに初回料金はかかりません。』

上記のように、雪花では心理検査の前に1時間半の初回面接を行います。
「自分は希望する心理検査を受けて、その結果を知りたいだけなのに、どうしてそんなことが必要なんでしょうか」と、思われる方もおられるかもしれません。

これにはいくつかの理由があります。
➀心理検査は施行する目的が明確でなかったり、施行のタイミングを誤るとかえって不利益となることがある。
②心理検査をご希望された経緯や事情を詳しくお伺いすることで、よりご希望にあった心理検査を提案させていただきたい。逆に、必要のない検査は行わないですむようにもしたい。
③心理検査の結果というのは、その方のおかれている状況、その時の状態、歩まれてきた道のりや積まれてきた経験によって、意味するところが違ってくることがある。結果が意味することをより詳しくみていくため、事前にお伺いしておきたいことがある。
④➀~③のようなことについて、心理検査を行う専門職には説明責任がある。

➀心理検査の目的とタイミングについて

本来、心理検査は行うことで明確な利益があると判断される場合以外は、むやみに行うべきではないとされています。
心理検査は、種類や行う数によっては半日近い時間を要することがあります。長い時間、集中して作業を行うことで疲労しますし、終了後に「どんな結果が出るだろうか」という不安を抱くこともあるでしょう。

「労多くして益少なし」ということがないように、何のためにどのような心理検査を行うことが必要なのかを事前によく検討しておく必要があります。
目的が明確になり施行する心理検査が決まったら、それをいつ行うかですが、いつでもよいというわけではありません。

上記のように長時間の心理検査はたいへんに疲れるものです。ある程度の集中力も必要とされます。種類にもよりますが、心理検査は短期間に繰り返し行えるものではないので、体調を整えた上で行うことが望ましいです。
体調不良で頭がいつものようにはたらかない、大きな怪我をしていて作業がしにくい、予定が立て込んでいて気ぜわしい時期などには、無理に心理検査を行わない方がよいでしょう。

②心理検査の目的を明確にするには

➀で心理検査の目的を明確にすることの重要性について述べました。では、どうすれば目的が明確になるのでしょうか。

社会制度の利用のために、心理検査から得られる客観的な情報を公的な機関から提出を求められることがあります。こういった場合、医療機関であれば心理専門職は医師の指示を受け、「制度の利用のために」という明確な目的に合った心理検査を選択します。

雪花のような場では「この心理検査を受けてみたいです」という、来所される方のご希望があって心理検査を行うことが大半となります。
このご希望は「性格について知りたい」「能力について知りたい」など、一言で述べられるものではないだろうと、わたくしは考えます。

その希望の背後には「性格について知りたい」「能力について知りたい」と、その方が思われるようになった経緯、事情、訳、理由があるはずです。
そういったことまでお聞きしてはじめて「こういった目的のために心理検査を受けたい」ということについて、お話ができるのではないでしょうか。

お話の結果、最初にご希望された心理検査が選択されたとしても、➀にあるように適切なタイミングぶ行えるように時期を遅らせることもあるかもしれません。また、目的にかなう心理検査が最初にご希望されたものとは別の種類になることも考えられます。

③心理検査の結果の意味について

心理検査の中には、数値で結果が出てくるものがあります(ネット上で結果の見方について出回っていることもあります。別の機会にまた詳しく述べたいですが、これはけして望ましいことではありません)。
そうしますと、例えばAさんとBさんが同じ検査を受けた時に、同じ数値が出てくることもありえます。では、これをもってして「AさんとBさんの結果は同じ」という結論を出していいものでしょうか?

AさんとBさんは、別の人間です。別々の人間であれば、身をおいている環境、その時の状況、心身の状態、積まれてきた経験など、異なるところが多くあるでしょう。
結果が同じであっても、上記のようなことによってその意味するところが違ってきます。ただ数値を出すだけでは、心理検査の結果を説明したことにはならないのです。

④説明責任、インフォームド・コンセントについて

『インフォームド・コンセント(informed consent)』という用語があります。1990年に日本医師会の生命倫理懇談会において『説明と同意』という訳語を当て、日本でも定着してきています。
医療の側が一方的に医療行為を行うのでなく、事前に十分で適切な説明を行い、患者が理解し納得した上で医療行為への同意を得られるようにする必要があるということです。

雪花は医療機関ではありませんが、心理検査を行うにあたっては『インフォームド・コンセント』が前提となります。
そのためには➀~③のようなことについて、十分に時間をとってお話をお伺いする必要があるのです。また、ご不明な点、疑問などについてご質問を受け、しっかりとそれにお答えすることも、心理検査という大変な作業に取り組む前の、重要なプロセスです。

以上のようなことから、雪花では心理検査を行う前の初回面接の時間を設定しております。

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