columnコラム

眠れないつらさ その2 健康的な生活ができれば苦労しない

2023/07/29

睡眠薬の使用、その前に

こんにちは、札幌カウンセリングオフィス雪花(札幌市琴似、北区、東区、西区、白石区と、その他の区)の菅原奈緒(臨床心理士・公認心理師)です。

『眠れないつらさ その1』では、不眠症について簡単に説明しました。
『その2』では、不眠症の治療と対処法について書きます。

『不眠症の治療』という言葉をきいて、思い浮かぶのはどんなことでしょうか?
「治療というからには、病院にいってお薬をもらってのむのでは?」でしょうか。

不眠症の治療の場合、薬物療法がすぐに行われるとは限りません。『その1』でも書いた通り、不眠の原因にはさまざまなものがあります。原因によって対処法は変わってきます。

・不眠症の中でも比較的軽症のもの
・加齢に伴って生理機能が低下し、睡眠時間が短くなり、質も悪くなった
以上のような場合には【睡眠衛生指導】に一定の効果があるとされています。

睡眠衛生指導とは

睡眠衛生指導とは、読んで字のごとく睡眠衛生についての指導です。
そもそも衛生とは、健康の増進を意味します。
食べ物を洗って食べる、歯を磨くなどは、健康を守るための衛生習慣です。
つまり、睡眠衛生とは、睡眠の質や量を向上させ健康を守るための方法ということになります。
具体的には、睡眠に関連した問題を解消して、入眠方法や睡眠方法を整えるということです。

睡眠衛生指導は、生活習慣や睡眠環境を確認するところから始まります。
確認した上で、どのような指導が行われるのでしょうか。項目を以下にあげます。

・定期的な運動を行う。
・寝室環境を快適にする。
・食生活を規則正しくする。
・寝る前に水分をとりすぎない。
・寝る前にカフェインをとらない。
・寝酒は逆効果。
・寝る前にはタバコを吸わない。
・寝床での考え事は避ける。

いかがでしょうか。どれも「確かに」と頷きたくなりませんか。

昼間しっかり運動をしておけば寝つきはよくなりそうです。メラトニンも生成できれば一石二鳥です。
騒音やまぶしい光は寝入りを妨げるでしょう。寝具も質をよくすれば快適です。
おなかがすきすぎても食べ過ぎても、寝つきは悪くなりそうですよね。
水分をとりすぎると夜中にトイレに起きることになり、そのまま目が覚めてしまうかもしれません。
カフェインは言うまでもないでしょう。就寝の4時間前から摂取を避けた方がいいそうです。
寝酒はほろ酔いなら眠れるのでは?と誤解されがちです。確かに一時的には寝つきがよくなることはあります。しかし夜中に目覚めやすくなり、睡眠を浅くします。
「タバコをすうことでリラックスできる」といういう方もおられるでしょう。しかしニコチンは身体を興奮させる作用があるのです。
寝床で考え事をして、なかなか眠れないのは多くの人が経験していることでしょう。

健康的な生活ができれば苦労はしない

睡眠衛生指導を読み、私が率直に思ったのは「それがすぐにできれば苦労はしないんだよね」でした。
睡眠衛生を軽んじているのではありません。逆です。
あげられているのは、どれも健康を守るために大切なことばかりです。
ですが、色々な事情があって、それを行うことが困難になることだってあるのです。

昼間しっかり運動する。これは生活習慣を変えることです。毎日運動するのは短時間でも容易なことではありません。
寝室の環境を整える。騒音のひどい部屋にいても、すぐに転居できないこともあるでしょう。寝具だって決して安くはありません。
規則正しい食生活。ただでさえ眠れずまいっているかもしれないところに、栄養バランスを考えた食事を用意するなんて。
就寝前の水分の取りすぎをさける。これはどうでしょう。人によっては事情があって多量の水分を必要としていることもあるかもしれません。
寝る前のカフェイン。一日の終わりに、コーヒーやお茶をのんでほっとしたい。それが数少ない楽しみだったら?寝酒やたばこについても同じことが言えるかもしれません。
ただ、アルコールについてはもっと深刻な理由でやめられない場合もあるでしょう。

そして、寝床での考え事。
「これがすぐにやめられるくらいなら、どんなに楽だろうか?考えても仕方ないことはわかっている。それでも考えずにおれない。やめたくても、勝手に浮かんできてとめられないんだ」
そんな思いをしている人にかける言葉はなんでしょうか。
「寝床では考え事をするのをよしましょうね」でしょうか。

これという正解はわたしには思いつきません。
ただ、そうなるにいたった事情、今の苦しさつらさ、眠れないことからくる不便などについて、おききするところから始めるだろうと思います。
睡眠衛生指導の他の項目についてもです。睡眠をとることを妨げている生活習慣があるとしたら、その生活習慣を必要とするに至った経緯、事情があるでしょう。


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