columnコラム

NPO法人コミュネット楽創 2022年度事業・支援報告会に参加して その1.5

2023/08/29

病院臨床の心理職として

前回、取り上げた制度の変化が、一医療従事者であったわたくしの目からはどのようにみえていたかをお話したいと思います。
それは「今のコミュネット楽創のことを知りたい、だから報告会に参加しよう」と参加を決めた経緯が、より伝わるようにです。

HPに経歴を掲載しているように、わたしは北海道教育大学で心理学を学びました。今はもう廃止された『社会教育課程』です。生涯学習や社会教育の専門家を育成することを目的とした過程です。通称『0免(ゼロメン)過程』ともいいました。教員免許を取得せずとも、卒業することができたからです。
生涯学習や社会教育は幅広い年齢層を対象とします。が、やはり教育大は、児童生徒の方々と接する機会の多いところです。0免過程でも免許を取得して卒業する人が多く、わたしも教育実習に行きました。

心理学専攻でも臨床に進むひとたちの多くは、教育や児童福祉の領域を選んでいました。わたしもそのつもりでした。江別市立病院精神科デイケアで非常勤勤務をしたことが、その後を大きく変えました。
グループホームや福祉的な就労の場も限られていた時代、そこは貴重な社会資源でした。
「どうしてこんなに選択肢が限られているのか?」現実を知らないなりに、疑問を抱きます。

病棟から外の世界へ

『棺桶退院』という言葉をご存じでしょうか?精神障害を抱える方が、病状が落ち着いても事情があって続く入院を『社会的入院』といいます。それが一生続き亡くなるときに退院となることを『棺桶退院』と医療や福祉の世界ではよんでいます。社会的入院による長期入院の減少を目指し、退院促進のための制度や施設が作られてきました。

私が特定医療法人社団林下病院に入職したのは、日本の精神科医療が大きく変わり始めていた頃です。長期入院でなく外来治療を中心に、多職種のスタッフがかかわって地域生活を送る。それが精神科医療のスタンダードとなる、そういう時代が来ようとしていました。
前回のコラムにあるよう、法改正が続き制度が変わりました。地域生活を支える社会資源が作られるよう、国のお金の流れも変わっていきました。

地域生活での選択肢は増えていくが

当時林下病院の近辺も、グループホームや作業所は、片手の指で数えるほどしかありませんでした。
法律が改正され新しい制度ができ、住居、就労の場、相談の場、人と交流し活動する場は増えていきました。新しい治療薬も出てきました。精神科リハビリテーションの施設やそのスタッフのいる病院やクリニックも増えていきます。

これまでなかった選択をすることができるようになる方たちがいました。ホワイトストーン以外にも、そうやって増えていく場所に足を運ぶ機会がありました。時代が変わっていくことを、精神科医療にかかわる人たちは肌で感じていたと思います。

私は病院の中で思っていました。「生きている間に合わない人たちがいる」と。人生は2度ありません。たった一度の人生をどこでどう生きるか。それが社会の在り方によって選択肢が狭められる。病気の症状が回復しても、選択肢が少ないことで、望まずとも病棟で一生を終える人がいる。それは今も続いている。いつまでかはわからなくとも、明日も明後日も続くのです。

どうしたら変わっていくのか

病院の中でできることをする。それが私の20年でした。病院の外で現状を変えようと模索し、四苦八苦している人たちがいることはわかっていました。長く勤めるうちに職場の内外ですることが増えていき、足を運ぶ機会は減っていきます。私の働き方が、そういう場に行く機会がないものだったのもありました。医療を離れても「どうしたら変わっていくのか」という問いは消えてはいません。「今のコミュネット楽創のことを知りたい、だから報告会に参加しよう」と、まず思ったのです。

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