columnコラム

コロナ禍とバーンアウト その3

2023/06/03

あらためて、バーンアウトについて

こんにちは、札幌カウンセリングオフィス雪花(札幌市琴似、北区、東区、西区、白石区と、その他の区)の菅原奈緒(臨床心理士・公認心理師)です。

バーンアウトは、必ずしも対人援助職だけに起こるものでありません。コロナ禍とバーンアウト その1でも『バーンアウトは、はじめは人を相手にサービスを提供する仕事をする人々に起こるものと考えられていました。しかしその後の研究で1980年代には、対人サービス以外の分野で働く人々にも起きうることがわかってきました。』と、書いたとおりです。

また「バーンアウト」で検索すると数多くの文献、資料、記事を見つけることができます。フロイデンベルガーが概念としてのバーンアウトを提唱した1970年代から半世紀以上を経て、社会的な認知度は当時よりも高まっているといえるでしょう。厚生労働省のe-ヘルスネットでも紹介されているほどです。
一部を引用してみましょう。

それまでひとつの物事に没頭していた人が、あたかも燃え尽きたかのように意欲をなくし、

社会的に適応できなくなってしまう状態のことをいいます。

絶え間ない過度のストレスにより発生し、うつ病の一種とも考えられています。朝起きられない・職場に行きたくない・アルコールの量が増える・イライラが募るなどの症状がみられ、仕事が手につかなくなったり対人関係を避けるようになります。

厚生労働省 e-ヘルスネット

これを読んで『うつ病の一種』というところに、引っかかりを覚えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「そうすると、バーンアウトは病気なの?」
いいえ、バーンアウトは疾病ではありません。ICD-11(国際疾病分類の第11回改訂版)では疾病としてではなく『職場の問題』として扱われています。
『慢性的な職場でのストレスに対処しきれないことによって生じる症候群』で『健康状態に悪影響を及ぼす要因』とはなりえますが、バーンアウト自体は疾病ではないということです(ただ、バーンアウトが健康状態に悪影響を及ぼしたことが、うつ病を発症する要因となることはありえそうです)。

次にバーンアウトの3つの特徴をあげます。
➀情緒的な消耗感(Emotinal exhaustion)
 仕事において情緒的な力(エネルギー)を出し尽くした結果、消耗し疲弊した状態のことです。
②脱人格化(Depersonalization)
 消耗し疲弊していくと情緒的なエネルギーを使わないようになり、お客さまや職場の同僚に、非人間的で思いやりのない態度をとるということがみられるようになります。
③個人的達成感の低下(Personal accomplishment)
 ➀と②のような状態に陥ると、仕事の質が落ちて評価も下がり達成感が得られなくなっていきます。


重要なのは➀~③のようなことが『慢性的な職場でのストレスに対処しきれない』ことによって生じるということです。バーンアウトは、個人要因だけでは生じません。環境要因が無視できないのです。

だからこそ「コロナ禍での職場環境の変化と業務の負担増から、医療従事者をはじめとする多くの対人援助職が燃え尽きてしまい、大量離職などにつながるのではないか?」という懸念を抱き、このコラムを書き始めました。

ですが、このコラムを書くためにあらためてバーンアウトについて調べるうちに「コロナ禍での職場環境の変化と業務の負担増から、対人援助職に限らず働く人たちのバーンアウトが増加するということはないか」という懸念を、新たに抱くようになりました。

バーンアウトは対人援助職に限らず、職場において慢性的なストレスにさらされている人たちには生じる可能性があることですし、コロナ禍で職場環境が大きく変化したり業績が悪化したことなどによって、慢性的なストレスにさらされている人は増えこそすれ減ってはいないだろうと予想されるからです。

それでは、どうすればそういった事態を防ぐことができるのでしょうか?バーンアウトの状態に陥った人たちを見つけることができるのでしょうか?


 

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