columnコラム

心理検査の機密保持について

2023/07/02

心理検査の機密保持とは

こんにちは、札幌カウンセリングオフィス雪花(札幌市琴似、北区、東区、西区、白石区と、その他の区)の菅原奈緒(臨床心理士・公認心理師)です。

先にアップした『心理検査前の初回面接はなぜ必要なのか?』で『心理検査の中には、数値で結果が出てくるものがあります(ネット上で結果の見方について出回っていることもあります。別の機会にまた詳しく述べたいですが、これはけして望ましいことではありません)。』と書きました。
このコラムでは、上記の心理検査の機密保持についてお話したいと思います。

機密保持とは、重要な秘密にあたることを外部に開示しないことです。
『心理検査の機密保持』は、心理検査における重要な秘密にあたることを外部に開示しない、ということになります。

ネットで公開される心理検査

ところが現実には、ネットで心理検査の用具の画像や、問題や質問項目、結果の詳細、解釈の仕方などが公開されつづけています。
どのように公開されているのか、ここでは、リンクを貼ったり詳しく紹介することはいたしません。問題をさらに大きくする行為になるからです。

機密保持の重要性について理解している専門家はそれを発見すると、倫理的な問題があることを指摘した上で削除や公開を取り下げることをお願いすることが多いです(全て発見できてはいないでしょうから、多い、と書いています)。ほとんどの場合は削除、公開の取り下げとなります。

それは、公開された方が機密保持の重要性についてよくご存じなかったという例が大半であるからでしょう。ですが、今も上述のようなことは後を絶ちません。まさにいたちごっこです。

なぜ機密保持が必要か

ではなぜ、心理検査の機密保持が必要なのでしょうか。
心理検査を行うことが、心理検査を受ける方の利益となる、そのことが守られるためです。

➀学習や練習の効果による弊害
 同じ検査を短い期間で何度か繰り返し施行したり、事前に検査問題を知って練習した場合、その効果によって「よい結果が出た」ように見えることがあります。
 しかしそれは、あくまでも「そうみえる」だけです。知能検査の場合であれば、知能が発達したとはいえません。それどころか検査結果をゆがめてしまい、「その人について知り、それを生活や治療や支援に役立てる」という心理検査を行う目的を果たせないことにつながります。

②先入観や誤解を持つことが結果に影響する
 心理検査には様々な種類があり検査問題があるものばかりではありません。
「検査問題を練習することにつながらないなら、公開してもいいのでは?」と思われる方もおられるかもしれません。
 心理検査がむやみに公開されないのは「この検査では、こういうことがわかるのだな」「この道具はこう使うのかな?」といった検査に対する先入観や誤解などを持つことが、結果に影響することを防ぐためでもあります。
 心理検査を販売する会社で公開されている情報などをみて「もっと知りたい」と思われることもあるかもしれませんが、それは心理検査を受ける方の利益を守るために必要なことだといえます。

③検査結果を公開することによる不利益
 ここまで読まれて「心理検査そのものや、問題を公開しなければいいのでは?結果を公開して意見をもらうことは、自分の利益になると思う」と、お考えになる方もおられるかもしれません。
 しかし、それもおすすめすることはできません。なぜなら、結果の公開も➀と②につながる可能性があるからです。
 また、検査の結果の意味するところについて検討することは、結果だけで行うことはできません。結果の検討を最もよく行うことができるのは、心理検査を行った専門職です。心理検査に無関係である人がむやみに結果の意味するところを検討し、検査を受けた方に伝えることは、結果について間違った説明をすることになりかねません。
 病院やクリニックで施行した検査であれば、結果について責任をもって説明できるのは、主治医の先生と、検査を行った専門職の方でしょう。
 結果から考えられることを、その後の生活や支援や治療にどう生かすか、ということについては、心理検査を施行した場所以外で利用している施設がある場合、そこに心理検査の結果をきちんとみることのできるスタッフがいれば、報告書などをもとに話し合うことはできるでしょう。
 

心理検査の際にお願いしていること

雪花では心理検査の秘密保持の観点から、心理検査を行う際に以下のことをお願いしています。
➀心理検査の受検後、検査の内容を外部にもらさない。
②心理検査の結果を、不特定多数の人や、第三者の目にふれるような場で公開しない。

ただ、②については、結果についてのこちらの説明が不十分であったり、わかりにくいものであったり、その後にどう生かしていいかわからなかったり、という事情があることで、そうしたくなる可能性もあると、わたくしは考えます。

ですので、心理検査を受けられた際、結果について疑問に思うことや不明な点があるときは、担当した専門職、その心理検査を行うことを指示をした専門職に、納得がいくまで説明を求めることが大切です。逆に言うと、施行した側には、結果について十分に説明する責任があるのです。


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