columnコラム

冬季うつとは

2023/10/23

冬がくる前に

こんにちは、札幌カウンセリングオフィス雪花(札幌市琴似、北区、東区、西区、白石区と、その他の区)の菅原奈緒(臨床心理士・公認心理師)です。
10月17日火曜日、手稲山初冠雪。2023年の立冬は11月8日。今年も、冬がやってきます。
今までと同じ時間に帰宅しても、あたりは暗く肌寒いです。
「また今年も、雪かきや水落をしないとなあ」など、冬仕事のことを思い浮かべ、物憂い気持ちになることもあるのではないでしょうか。
そして、年の瀬が迫ってきて「あれをしないと」「今年もあれに手をつけられなかった」と、どこか切迫感を覚える方もいるかもしれません。

ただ、上に書いたような物憂い気持ち、切迫感は日常生活にはよくあることです。また、ひどいストレスによって体調を崩すこともあるでしょう。

人には、自然に心身の状態が回復する力が備わっています。ですが、複数の要因がかさなり、その力がうまく働かなくなってしますと、大きく調子を崩すこともあります。
それがなかなか回復しない、悪化していき、生活に大きく支障が出ることが、時にあります。そして『病気』と言われる状態になる場合があるのです。
うつ病の場合であれば、気分が落ち込むような明らか原因が思い当たらないことがあります。また、原因と思われることが解決しても、長期間気分と身体の症状が続くのです。

本格的な冬がくるまえに、コラムで取り上げようと思っていたことがありす。上のような病気の一つである冬季うつです。季節性で、冬季に日照時間などの関係で脳内物質のバランスが崩れ、生じるうつのことを言います。

冬季うつとは

『冬季うつ』は、上でも書いたとおり、冬におこりやすいです。まず、うつ病にはいくつかの分類方があります。

➀症状のあらわれ方はどのようであるか
 単極性のうつ病:うつ状態になることがある。
 双極性のうつ病:うつ状態と躁状態(軽躁の場合も)とが、波の上がり下がりのように両方おこる。
②重症度はどの程度か 
 軽症:周囲に気づかれないまま社会生活を営んでいることもあるが、生産性は落ちるなどはあり本人は苦しんでいる。
 中等症:社会生活にも日常生活にも支障をきたしている。仕事をしている場合は欠勤や遅刻が目立つように。
 重症:周囲からみても明らかに社会生活と日常生活に支障をきたしている。寝たきりのような状態になることもある。希死念慮が強まることも。 
③初発であるか再発であるか 
 発症したのが初めてであるか、それとも再発しているかです。うつ病は再発を繰り返しやすいと言われていますが、再発を繰り返すと慢性化していきます。
④病型の特徴がどのようなものであるか 
 『冬季うつ』は『季節型』として、ここに含まれます。他には『メランコリー型』『非定型型』『産後うつ』『仮面うつ』などがあります。

冬季うつの特徴

まず、うつ症状を以下にあげます。はじめは精神的なものです。
・気分が落ち込む。
・それまで楽しんでいたことや頑張っていたことなどに関心がもてなくなる。
・不安や焦りやイライラがつのる。
・喜怒哀楽の喜びと楽しみが感じにくくなる。
・意欲、注意力、集中力が低下し、ミスが増え、生産性が落ちる。
・悲観的な物事のとらえ方、結論の出し方がふえる。
・身の回りのことに構えなくなり、人と交流することや外出もおっくうになる。

次は、身体的なものです。症状がうつ病からでなく、身体の病気からきていることもあります。ですから、ここにあることがあてはまっていても、まず身体のことをしっかり専門医に診てもらうことが大切です。
・疲労感と倦怠感がとれない。すぐに疲れてしまう。
・食欲の低下、逆に飲酒量が増えることがあります。
・眠つけない、眠りが浅い、睡眠のリズムが崩れる。
・動悸や息苦しさや口の渇き、身体の痛みやこりなど。

冬季うつの場合、上記に加え、食欲が旺盛になり炭水化物や甘いものを欲し、体重が増加することもあります。また、過眠と言って眠くてたまらなくなる、朝起きるのがつらい、といったことが起きます。
このような特徴から、冬眠にたとえる人もいます。
そして、日照時間の短くなる10月~11月頃から春にかけておき、3月頃になると軽快するというパターンを繰り返します。
北海道のように、高緯度で日照不足になりやすく、寒さや雪でストレスを感じ、外出がしにくくなる土地ではなりやすいという報告もあります。

冬季うつの予防と対処

病気は完全に予防できるものでなく、対処でもっとも適切なのは専門の医療機関での治療です。
ただ、これから書くことは、厳しい冬をのりきるためにも役立ちそうなことだと思います。
・規則正しく生活し、なるべく日の光をあびる。日光がとぼしいときは、照明を明るくする。
・脳内物質のバランスを整えるためにも、栄養バランスのとれた食生活と適度な運動をする。外出が難しいときは、家事なども運動になる。
・するべきことを整理し、優先順位をつけてから取り組むようにする。忙しい年末には、あれもこれもとなりがち。小分けにして、手をつけやすいとこから。
・病院へ相談にいく、治療を受ける。それがためらわれるときは、周囲の人にまず相談してみる。

さて、ここまで読んで「それができれば苦労しません」「できたらこんなことにはなっていない」「もうやっています」という方も、おられるのではないでしょうか。『眠れないつらさ』でも同じようなことを書きました。それでも「まずは相談してみませんか、ご事情をお伺いいたします」と、私はお伝えしたいと思います。
厳しい冬を越えるためには、多くの人の手が必要です。人生の中で生じる困難もまた、一人だけで見つめるにはつらすぎる、抱えるには大きすぎ、重すぎることがあるからです。

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