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睡眠美容という言葉に感じた違和感|睡眠薬は美容のための道具なのでしょうか
2026/06/24
ごあいさつ
こんにちは。札幌カウンセリングオフィス雪花(札幌市西区琴似)の菅原奈緒(臨床心理士・公認心理師)です。
札幌ではラベンダーが咲きほこり、初夏らしい景色が見られる季節になりました。一方で、気候変動の影響もあってか、日によってかなり気温差が大きく、体調管理の難しい時期にもなっています。
目に見えて体調が崩れるだけでなく、なんとなく疲れやすい、眠りが浅い、朝すっきり起きられないと感じている方もおられるのではないでしょうか。
「睡眠美容」という言葉に感じた違和感
私は精神科病院に約20年間勤務した後、2023年に札幌市西区に札幌カウンセリングオフィス雪花を開所しました。
現在は雪花で、カウンセリング、心理療法、心理相談、心理検査を用いたアセスメントを行っています。ご利用される方の同意のもと、必要な場合は医療機関とも連携しながらご相談をお受けしています。
精神科病院勤務時代から現在に至るまで、睡眠は心身の健康を考えるうえで避けて通れないテーマの一つでした。心身の調子をみていく上で、また、そこに影響する、重要な観点であると考えます。
そんな日々を送る中、最近、SNSで「睡眠美容」という言葉を見聞きする機会がありました。睡眠が健康や美容にとって大切であることは広く知られています。しかし、その一方で、私はこの言葉に少し気になるものを感じました。
今回は、それが必要となる場合は精神科医療と連携しながら相談をお受けしてきた立場からも、「睡眠美容」という言葉に私が違和感を覚えた理由について考えてみたいと思います。
まず、「睡眠美容」とは、良質な睡眠によって美容や健康の維持・向上を目指そうという考え方のようです。睡眠不足が心身にさまざまな影響を及ぼすことはよく知られており、その意味ではそれ自体は決して不自然な考え方ではないと思います。
睡眠は人間にとって大切なもの
睡眠が人間にとって重要であることは言うまでもありません。日本睡眠学会でも、睡眠は生命活動に必要不可欠なものであることが説明されています。
慢性的な睡眠不足は、眠気や意欲の低下、集中力や記憶力の低下など、さまざまな精神機能に影響を及ぼします。また、ホルモン分泌や自律神経機能にも影響することが知られています。
もちろん、睡眠は肌の状態とも無関係ではありません。睡眠不足によって肌荒れやくすみが生じたり、紫外線や乾燥などからの回復が遅れたりすることもあります。
その意味においては、「肌の健康のためにも睡眠を大切にしましょう」という考え方それ自体に強い異論はありません。
私が違和感を覚えた理由
私が違和感を覚えたのは、「睡眠美容」という言葉そのものではありません。違和感を覚えたのは、「睡眠美容」という文脈の中で、
・デエビゴ
・マイスリー
・ルネスタ
・デパス
といった、不眠症の際に処方される睡眠薬が紹介されていたことです。これには、驚愕といっていいほどの衝撃を覚えました。精神科勤務の経験から、睡眠薬は依存性の心配がされるところがありながらも(現在は、かつてよりも改善された睡眠薬が用いられ、多剤処方が主流ではなくなっていますので、主治医との相談のもと適切に使用されている場合は深刻な依存にいたることは考えにくいです)、心身の状態によってはQOL(生活の質)の維持のために必要とされることがある、という認識でいたからです。
日本睡眠学会では、不眠症の際に処方される睡眠薬の使用についてガイドラインを示しており、睡眠薬は医師が状態を評価したうえで慎重に使用することが勧められています。睡眠薬は、本来、苦痛や生活上の支障を伴う不眠に対して用いられるものなのです。
先に述べたように、QOLというところから、眠れないことによって学校や仕事、家庭生活に影響が生じている方にとって、睡眠薬が大きな助けになることもあります。
だからこそ私は、睡眠薬を美容のための商品やサービスのように扱うことに明らかな違和感を覚えるのです。
睡眠薬は美容のための道具なのでしょうか
睡眠薬は、美容のためではなく、治療のために用いられるものです。もちろん、その方の置かれている生活状況や心身の状態によって、「もっとよく眠りたい」「疲れを取りたい」「健康でいたい」と願うことは自然なことです。深刻な悩みとなっていることもありえます。
しかし、「美容のためにより良い睡眠を求めること」と、「不眠症として治療を必要としていること」は同じではありません。治療のために用いられる薬を、美容のための選択肢として語ることには慎重さが必要ではないかと私は考えています。
睡眠薬は、本来、それを必要な方が、治療のために、適切な評価のもとで使用する医療資源であるからです。そして、それが行われないことによって、その方の本質的な苦しみや悩みが、深刻でないものとして扱われてしまわないかという危惧を抱きます。
次回予告
「もっと眠りたい」「睡眠の質を上げたい」日々感じていた違和感、抱いていた悩みの背後には、治療を必要とする不眠症があった、というケースも、ないわけではありません。
次回は、「不眠症とはどのような状態なのか」について改めて考えてみたいと思います。なお、不眠症については以前のコラムでも取り上げています。
『不眠症とは?|眠れないときに知っておきたいこと』
https://sekka-counseling.com/news-1302.html
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