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#カウンセリング #心理検査 #心理理論
WAIS-Ⅳは「発達障害の検査」ですか? ― 知能検査でわかること・わからないこと ―
2026/02/04
こんにちは、札幌カウンセリングオフィス雪花(札幌市琴似、北区、東区、西区、白石区と、その他の区)の菅原奈緒(臨床心理士・公認心理師)です。
このコラムは、
「自分に発達障害があるのではないかと気になっている」
「ネットで心理検査を受けた人の体験談などを見て、自分の悩みと近いと思った」
「WAIS-Ⅳ(知能検査)を受けた方がよいのか迷っている、受けてみたい」
といった不安や疑問や希望をお持ちの、ご本人やご家族に向けて書いたものです。
「検査を受ける・受けない」を決めてご予約をされる前に、このコラムを参考に状況を整理し、必要なタイミングで、必要なことのために心理検査を受けることを検討するための材料になれば幸いです。
1.「WAIS‐Ⅳ=発達障害の検査?」というご質問について
近年、心理専門職の臨床の現場では、
「WAIS‐Ⅳを受ければ、発達障害かどうか分かりますか?」
「発達検査としてWAIS‐Ⅳを受けたいのですが?」
といったご質問をいただくことが増えています。
インターネット上でも「WAIS‐Ⅳ=発達障害の検査」のように紹介されていることがしばしばありますが、実際にはそう単純ではありません。
ここでは、
「WAIS-Ⅳとはどのような検査なのか?」
「発達障害の診断のために必須であるのか?」
「どんな場合に検査が役に立つのか?」
といった点について、整理してお伝えしたいと思います。
2.WAIS-Ⅳは「知能検査」です
そもそも、WAIS-Ⅳ(ウェクスラー成人知能検査 第4版)は、16歳以上を対象とした「知能検査」です。
雪花では、「知能の水準と、傾向を調べる検査」とご説明しています。
検査に出てくる専門的な用語や、結果として示される数値の詳しい算出方法について知っていなくとも大丈夫です。
むしろ、事前にあまり詳しく知りすぎることで、検査を受けるときの意識や答え方に影響が出てしまうこともあります。すると、結果が正確でなくなるおそれもあります。ですから、ここでは最小限の説明にとどめます。
大切なのは、「何のために検査を実施し、その結果をどのように役立てるのか」という点です。
雪花では、WAIS‐Ⅳに限らず心理検査の実施前に【初回面接】の時間を設けており、目的や、結果をどのように生活や支援に活かしていきたいかについて、ご本人と一緒に相談するようにしています。
3.発達障害の診断はどこで、どのように行われるのか
では、発達障害があるかどうかは、どこで、どのように判断されるのでしょうか。
発達障害(自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能障害など)の診断は、
- 生まれてからこれまでの様子(生育歴)
- 学校や仕事、家庭などでの困りごと
- 日常場面での行動の特徴
- 医師による診察・医学的な評価
- 必要な場合に行う心理検査・発達検査
といった、多角的な情報を総合して、医療機関で医師が行うものです。
WAIS-Ⅳのような知能検査は、その中の「知的な側面」をより詳しく見るための一つの選択肢となります。これにより、同じ診断名であっても、その人固有の悩みや困りごとについて、より検討しやすくなることがあります。
検査だけで診断がつくわけではなく、必ずしも検査を行わなくとも、他の情報から診断がつく場合もあります。
また、WAIS‐Ⅳのように「すぐに再検査を行うことを前提としていない」検査は、実施のタイミングが非常に重要です。
診断について医師に相談するかどうか迷われている段階では、医療機関以外で心理検査を受けることについて、慎重に検討されることをおすすめいたします。
4.知能検査で得られるものと、発達障害とのちがい
知能検査を行うことで、たとえば次のようなことが検討できます。
- 仕事や勉強の中で「取り組みやすいこと」「行いにくいこと」の傾向
- 自分では「全部ダメだ」と感じていても、「ここは生かしていける資質である」と言える部分
- その人にとって負担がかかりやすい、あるいは過ごしやすい状況や環境はどういうものであるか
こうした情報は、
- その人が生きやすいように、働き方や学び方、日常生活の送り方について検討し、工夫する
- その人にとってのよりよい支援のために、支援者(医師・カウンセラー・学校や職場の担当者など)と情報を共有する
といった場面で、具体的な対策を考える際に参考になります。
一方で、ここがとても大切な点ですが、「WAIS-Ⅳで示された結果」と「発達障害かどうか」という診断名は、イコールではありません。
同じような結果であっても、生育歴や現在の生活状況、他の症状の有無によって、見立ては変わってきます。
医療機関や公的機関以外で行う知能検査はあくまで、「今の困りごとを整理し、対策を立てやすくするための選択肢のひとつ」だと考えるのが適切です。
5.ネット上の情報と、それにふれるときに背景にある思い
インターネット上には、
『この検査を受ければ、発達障害かどうか分かる』
といった表現もみられる一方で、専門家が丁寧に解説している記事や、参考になる情報源も少なくありません。
ただ、情報量が多く、断片的で、個人の経験に基づいたものが少なくないために、
- 診断名だけを早く知ろうと思いつめてしまう
- 検査の数値が『自分の価値』を決めるように感じてしまう、それを期待する
- 一つの検査結果だけを根拠にした、自己判断や他者へのラベリングが起こりかねない
といった誤解や弊害につながることもあります。また、【心理検査の機密保持】の問題にもつながります。
その背景には、
「今のしんどさに、何か名前がつけばほっとするのではないか」
「自分の悩みについての答えが見つかるかもしれない」
という、切実な事情がある場合も少なくないのではないでしょうか。
だからこそ、検査を受ける前に、まず
「何に困っていて」「何を知るために検査を使いたいのか」
を、これまでを振り返って、ゆっくり整理する時間が大切だと、雪花では考えています。
6.雪花で大切にしていること
札幌カウンセリングオフィス雪花では、WAIS-Ⅳなどの心理検査を実施する際、次のような点を大切にしています。
- できるだけ正しい情報をお伝えすること
「この検査で何が分かり、何は分からないのか」を、できるだけ分かりやすくお伝えします。
初回面接でお伺いするご事情によっては、申し込み時とは別の種類の心理検査を選択肢として提示することもあります。
ただし、心理検査実施に前に説明できることには限界があるため(結果に影響が出ないように)、詳細は結果説明の際になることもあります。 - 検査結果を“何かに当てはめる”のではなく、“今の悩みの整理に使う”こと
数値という結果の意味するところを機械的に判断するのでなく、これまでの体験や現在の生活とあわせて、「その人にとっての意味」を一緒に考えます。 - 検査の結果を、その後の生活や支援につなげること
結果の意味するところから、今後の対策について話し合います。また、必要に応じて、主治医の先生や関係機関との情報共有(ご本人の同意のもと)も行うことができます。
心理検査は「その人にラベルを貼るためのもの」ではなく、その方が少しでも生きやすくなるための手がかりとして活かされてこそ意味がある、というのが私の考えです。
7.心理検査を行うときに、一番大切にしたいこと
心理検査は、本来、目的が明確で、検査を受ける方にとって「利益」があるときに行うものです。
「今どのようなことで困っているのか?」
「検査の結果として、どのようなことが分かると今後に役に立ちそうか?」
「結果を、今後どのような場面で活かしたいのか(関係者との情報共有を希望するかも含めて)?」
こうした点を確認しながら、「本当に今、検査をすることが望ましいのか」を一緒に考えていきます。
「WAIS-Ⅳを受けた方がいいのかどうか分からない」
「検査が自分の役に立つのか知りたい」
といった段階でご相談いただくことも可能です。この場合は【初回カウンセリング】(90分)となります。
その場合は、無理に検査をお勧めするのではなく、ほかの選択肢がありそうかどうかも含めて、お話をお伺いします。
当オフィスでの心理検査の流れや【料金】、【ご予約】については、【心理検査】のページをご覧ください。
